欧州ファッション界に
認められた
京繡の「長艸繡巧房」。
ひと針ひと針、
願いを込めて。

京繡

日本各地のお祭の
懸装品修復・新調をはじめ、
着物や和装飾品などへの刺繡を手掛ける
「長艸繡巧房」。
名だたるデザイナーをはじめ、
国内外から称賛される「京繡」の、
その卓越の技に触れるひとときを堪能しましょう。

長艸繡巧房

1933年、長艸芳之助氏によって創業。現在では京繡伝統工芸士であり作家でもある2代目長艸敏明氏と妻・長艸純恵氏が工房を継承され、ご子息の長艸真吾氏と妻・長艸歩氏、他10名の職人の方々が活躍されています。長艸繡巧房では、祇園祭の山鉾に用いられている水引幕の修復や復元新調、能などの舞台衣装や着物・帯・小物・室内装飾品の制作などを行なっています。 同工房では季節ごとの新作発表に加え、お客様に合わせたオーダーメイドの京繡作品を制作。丁寧なヒアリングからその方に合った色づかいや柄、ご要望のデザインを模した世界にひとつだけの作品を生み出しています。手に取りやすいバッグや小物といった和装品は販売が開始されるとすぐに売り切れてしまうほどの人気。オーダーメイドではお客様の愛犬を模した刺繡や、鶏がカメラ持っている様子の刺繡など、個性豊かなオリジナルの1点物が完成します。刺繡を絵に描き図案から起こせる職人が在籍する、同工房ならではの強みです。商品の完成は打ち合わせから半年ほど。手間暇かけて手作業で、ひと針ひと針繊細な刺繡が施されていきます。

京繡の歴史は古く、飛鳥時代に仏教と共に繡仏(刺繡で描かれた仏画)として大陸より伝わったとされています。その技術は平安京遷都に伴い京都に伝えられ、繡技の職人を抱える『繡部司』が京都に置かれるようになりました。そうして刺繡が衣服の装飾に用いられ始めたのが、京繡の起こりと言われています。それ以来、京繡は時代に即して十二単や武将の胴服、能衣装や小袖などに施されるようになり、多くの着物を華やかに彩ってきました。京繡は京の地で受け継がれてきた匠の技を用いて絹織物に絹糸や金銀糸を用いて刺繡していく、繊細かつ華麗な表現を特徴に持った、日本が誇る伝統工芸なのです。

また、長艸繡巧房では京繡の伝統工芸士を育成する『繡巧塾』も開校。伝統ある技法を後世へ受け継ぐため、後継者の育成にも力を注いでいます。

京繡図案の収集家でもあったという初代・長艸芳之助氏に次いで、二代目・長艸敏明氏は幼少期から大量の図案に触れ、京繡の世界へ。日本国内で繡や能束帯に関する個展を多数開催。1994年にはフランス・パリのバガテル城で能衣装・小袖の展覧会(パリ市後援)を開催しました。展覧会にはフランスのファッションデザイナー ピエール・カルダン氏や、イギリスのファッションデザイナー ジョン・ガリアーノ氏といった名だたるデザイナーが来訪。ジョン・ガリアーノ氏がパリコレの場で「長艸に影響を受けた」と発言したことでいっきに長艸繡巧房は注目の的となり、海外での活躍の場が広がっていきました。翌年1995年にはパリ・エルメス本店のクリスマスディスプレイに用いる刺繡作品を制作。金糸を使わずに金を表現したというクリスマスディスプレイは話題を呼びました。

また、日本国内でも能や歌舞伎の衣装制作をはじめ、各地の文化財修復・新調にも携わってきた長艸敏明氏。ある水引幕の復元は1枚あたり2年の歳月がかけられ、4枚合計すると8年にも及ぶ長い時間の中で職人たちによって手掛けられてきました。長艸繡巧房は2013年には北観音山、2015年には占出山の水引幕の復元新調を担当。祭りの繡はしっかりとした糸で施されており、100年、200年形をとどめる繡い方をされています。かつての職人たちが悩み抜いてきた技法をまもりながらも、技術的な改良を重ねて創り上げられていく京繡。技法や技術に加え、自分は何を造りたいのかを常々考えていくことが重要であると長艸敏明氏はおっしゃいます。

〒602-8432
京都市上京区浄福寺通上立売上る大黒町699
TEL 075-451-3391
www.nagakusa.info
見学は要予約

長艸繡巧房三代目 長艸真吾

三代目・長艸真吾氏はニ代目・長艸敏明氏のもと、幼少の頃より京繡を身近に見聞きしながら成長。関西大学にて心理学を専攻し、卒業後、改めて京都市立芸術大学へ入学し芸術への造詣を深めました。2001年より、長艸真吾氏は京繡制作に従事。初代や先代とはまた違った、独自の世界観を繡の技術に落とし込んでいます。「針と糸を使って刺繡をするということは、『祈り』の一種である」と艸真吾氏はおっしゃいます。本来刺繡とは針と糸を布に刺す、『念』を込めて行われる物。願いを込めて誰かのために刺繡を施すということは、『祈り』そのものの行為なのです。古くから残る繡の図案にも吉祥文様や縁起物、季節や感謝の気持ちなど、フォーチューン的なものが多く残されています。京繡体験では親から子へ、夫婦で互いに、子から親へ、ひと針ひと針大切な人への願いを込めて刺繡を施してみてください。

京繡コース

体験では椅子に座って本格的な京繍の刺繍体験を行うことができます。

刺繡に使用する絹糸は8000もの色が存在します。その中より図案似合う色を選びとり、職人が1本ずつ手で縒って、表現に合う糸をつくりあげます。この縒り糸のバリエーションが多く表現が豊かなことが長艸の刺繡の特徴です。

1.図案&糸の色選び

まず、数種類の図案よりお好みのものを選んでいただきます。次に、図案に合った色糸を数種選びます。

美しくまとまるのは3〜4色のグラデーション。そして、選んだ色で図案に配色をします。この時の配色・糸選びによって、個性も出ますし、全体の雰囲気も決まります。

2.繡い作業

京繡の特徴は『両手刺し』です。人差し指をガイドにして中指と親指で針を持って挿し、親指と人差し指で針を取るということを、表裏で幾度も繰り返していきます。桜の花びらの柄を1枚繡うのに、30~40ステッチほどがかかります。特に下から針を刺すのは表から見えないため難しく、慣れが必要です。右手が表、左手が裏にくるので、刺繡界ではなかなか慣れない左手の作業が比較的スムーズに行える左利きが有利と言われているそうです。

花びらの柄5枚を繡うのにかかる時間は3時間半ほど。糸の縒りを隣の糸の縒りと合わせることで美しく見えるなど、非常に細かい熟練の技を体験してみましょう。

なお、来所の際は普段だと見られない、日本各地のお祭を彩る懸装品の修復・新調の実作業も見学可能です。撮影などはできませんが、貴重な修復・新調を間近で見ることができるめったにないチャンスをお楽しみください。

お土産

京繡はヨーロッパの刺繡のようにビーズやスパンコールを使わない技法。素材自体に派手さはありませんが、糸の縒りの表現だけで幾通りにも表現の幅を広げられる、美しい刺繡の技をご堪能ください。

ひと針ひと針、職人の手によって丁寧に施された京繡の作品。大切な場面を彩る衣装として、大切な方への想いを込めた贈り物として、ぜひお使い下さい。

京繡着物 藤狂言の丸

藤の花と狂言丸紋が刺繡された、華やかな着物。こちらは仮絵羽(仮に仕立ててあるもの)になるので、ご希望のサイズに合わせてお仕立てすることができます。その場でお持ち帰りをご望される方には、事前に仕立て上げてその場でお渡しすることも。さらに八掛(裏地)は御希望の色に変更可能。ドレスの形に仕立て変えることもできます。こちらのデザインは海外の方からも非常に人気が高く、金通し地の豪華なデザインになっています。金糸を細い糸で繡い留めていく『金駒繡(きんこまぬい)』や、横の布目に沿って糸を渡して細かくとじ繡いをする『菅繍(すがぬい)』などの技法が使われています。

実際にお手に取ってみてご自身の一点ものをオーダーしたいと思われましたら、世界に1つだけの京繡の着物をオーダーメイドで仕立てることも可能です。

京繡バッグ

こちらのバッグはシルクの生地に絹糸で刺繡が施された華やかなひと品。春の新芽の息吹を感じさせるような若草色のものと、日の光を受けキラキラと輝く川の水面を思わせる水色のもの、2種類からお選びいただけます。さり気ない刺繡はシーンを選ばず、さまざまな装いに合わせることができると好評です。

[右]縦:13.5cm(持ち手含む:22.5cm)x横:23cm/マチ:10cm
[左]縦:11.5cm(持ち手含む:23cm)x横:31cm/マチ:10cm